2012年3月26日月曜日

ディーゼルエンジン - Wikipedia


ディーゼルエンジン (diesel engine) は、ディーゼル機関(ディーゼルきかん)とも呼ばれ、ドイツの技術者ルドルフ・ディーゼルが発明した内燃機関である。1892年に発明され、1893年2月23日に特許を取得した。

ピストンによって空気を圧縮し、シリンダー内の高温空気に燃料を噴射することで自然着火させるしくみである。

実用的な内燃機関の中ではもっとも熱効率に優れる種類のエンジンであり、また軽油・重油などの一般的燃料の他にも、様々な種類の液体燃料が使用可能である[1]。汎用性が高く、小型高速機関から巨大な船舶用低速機関まで様々なバリエーションが存在する。

エンジン名称は発明者にちなむものであるが、日本語表記では一般に普及した「ディーゼル」のほか、かつては「ヂーゼル」「ジーゼル」とも表記された。日本の自動車整備士国家試験ではジーゼルエンジンと呼称している。

圧縮されて高温になった空気に軽油や重油などのディーゼル燃料を吹き込んだ時に起こる、自己着火(正しくは「発火」)をもとにした膨張でピストンを押し出す超拡散燃焼である。理論サイクルの分類では、低速のものがディーゼルサイクル(等圧サイクル)、高速のものはサバテサイクル(複合サイクル)として取り扱われる。

ディーゼルエンジンは、4サイクル又は4ストロークと呼ばれるものと、2サイクル又は2ストロークと呼ばれるものとに大別される。

4サイクル・ディーゼルエンジンの各行程
  1. 吸入行程: ピストンが下死点まで下がり、空気をシリンダー内に吸い込む
  2. 圧縮行程: ピストンが上死点まで上がり、空気を圧縮する
  3. 膨張行程: シリンダー内の高温高圧の空気に燃料が噴射される。燃料が燃焼し膨張したガスがピストンを下死点まで押し下げる
  4. 排気行程: フライホイールの慣性や、他の気筒での膨張などによりピストンが上死点まで上がり、燃焼したガスをシリンダー外に押し出す

燃料の噴射には高圧ポンプが使用され、燃焼方式の違いで、単室の直接噴射式と副室式(予燃焼室式・渦流室式)に分かれる。

2011年においては、ガソリンエンジンにもディゾットエンジンと呼ばれる[2]直噴式ガソリンエンジンの一種が登場し、またSKY-Gと呼称される圧縮比14の高圧縮ガソリンエンジンがマツダより発表されるなど、ディーゼルエンジンとの区分けが曖昧になりつつある[3]

過給器においては、電動アシストターボチャージャーや、可変ターボなどの登場が見られる。 吸気バルブの開閉タイミング操作が可変になり、エンジン出力を調整するための、スロットルバルブの必要もなくなった。また、燃料に水を添加するデュエット・バーン・システムなど、燃料のちがいによる区分けも曖昧になっている。

これらの変化により、ディーゼルエンジンは点火装置の不要な内燃機関に本質が変化しつつあるといえる。

ディーゼルエンジンは内燃機関の中でも熱効率に優れ、低精製の燃料でも使用できる。圧縮によって吸気を高温にする必要があり、高い圧縮比(初期シリンダ容積と圧縮時のシリンダ容積の比)が要求される。高い圧縮比は機械的強度を要求し、丈夫な部品は重く嵩ばるだけではなく、コストも架かり、可動部重量による機械的損失も大きくなる。

吸入した空気を圧縮し、その中に燃料を噴射して自己着火(発火)させる圧縮着火方式のため、過給を行なってもガソリンエンジンで問題となるノッキングやデトネーションがディーゼルエンジンでは起こらず、その対策として圧縮比を下げる必要もないため過給とは相性がよく、多くが過給機を備えている[4]

[編集] 燃焼行程

ガソリンエンジンでは、あらかじめ吸気にガソリンを霧化して混合させ、混合気としてシリンダー内に導入するが、ディーゼルエンジンではシリンダー内の高温高圧になった空気中に液状の燃料が高圧で噴射される。ただし、この燃料噴射によってシリンダー内に生じた微細な油滴が注入直後瞬間的に自発発火する訳ではなく、ミクロな油滴の表面で気化した燃料ガスが空気と混合して燃えやすい状態へと変わった後に、発火することになる。この注入から発火までの時間を「着火遅れ」と呼び、この遅れの間にシリンダー内に広がった燃料ガスが自発発火によって一気に燃焼するため、シリンダー内が急激に高温、高圧となり、騒音と振動の原因となっていた。また、注入された燃料油滴がシリンダー内に広がり切る前に自発発火する� ��とが避けられず、原理的にシリンダー容積を使い切ることが難しい。

1990年代後半から登場した電子制御コモンレール方式の燃料噴射装置では、燃料を超高圧で自由なタイミング、かつ自由な回数噴射できるようになっており、燃費・出力・環境対策に関して最適の燃料噴射が行なえるようになっている。

[編集] 4ストロークと2ストローク

21世紀初めの現代の高速ディーゼルエンジンでは4ストローク機関が主流であり、航空機にまで使われたクルップ・ユンカース式対向ピストンエンジンや、GMのユニフロー掃気ディーゼルエンジンなど、第二次世界大戦以前から出現していた2ストローク機関は一部の例外を除いて姿を消した。一方、極低速回転の大型船舶用は、2ストロークのユニフロー掃気ディーゼルエンジンが主流となっている。

[編集] 燃料噴射ポンプとインジェクター

従来型の燃料噴射装置は燃料の「加圧」と「制御」の両方を燃料ポンプで行う。このようなポンプを「ジャーク式」といい、燃料噴射量・タイミングなどがすでに制御された状態で加圧を行うものである。この形式では、噴射ポンプの他に噴射量を制御するガバナーや、噴射タイミングを制御するタイマーが組み合わされ、これらはポンプの加圧能力と並んでエンジンの性能を決定する要素となっている。

制御の機構は遠心力や負圧を利用した機械制御が中心で、一部電子制御が採り入れられているものもあるが、大きな力のかかる加圧動作が求められる為に微細な制御には限界がある。

[編集] 概要

かつてのディーゼルエンジンでは、1本の駆動用カムで一列に並んだ各シリンダー向けポンプが駆動される列型噴射ポンプ(Inline Injection Pump)と呼ばれる、直列エンジンに似た形状の噴射ポンプが用いられた。駆動用カムで動作するポンプ内のピストンは常に一定量のストロークで動いているが、実際にはスロットルバルブと連動して噴射ポンプのガバナーが動作し、ピストン外周に刻まれた螺旋状の溝を用いてラック機構によりピストンを上下させ、ピストンストロークを可変させる事で噴射量をコントロールしている。このピストンストローク量の変化は全気筒一斉に行われる為、スロットルバルブの開け閉めの頻度と回転数によっては若干の噴射量のミスマッチが発生し黒煙の発生や出力のロスが起こりやすくなる。

列型噴射ポンプは一種のメータリングポンプであり、機構が単純でありながらある程度までの大きさのディーゼルエンジンに対応できる為、トラックや建設機械、鉄道、産業用エンジン、小型船舶、農業機械などで未だに用いられている。

その後登場した形式としては、比較的小型の乗用車や小型トラック向けに開発された分配型噴射ポンプ(Distributor Injection Pump)が挙げられる。この形式は別名ロータリーポンプ(Rotary Pump)とも呼ばれ、一組のカム・ピストンのみを用い、ロータリーバルブで各気筒への燃料の分配を行うものである。ロータリーバルブ上に各気筒への分配パイプが密集して並ぶ為、その外見はガソリンエンジンのディストリビューターに良く似たものとなっている。 分配型噴射ポンプはボッシュVE型等が有名であり、スロットル開度に応じて分配弁の開弁量を可変させる事で列型噴射ポンプと比較して低回転から高回転までスムーズな燃料噴射量の調整が行える。いくつかの分配型噴射ポンプはターボチャージャーやスーパーチャージャーなどの過給機に対応する為の燃料増量機構を別途備えている場合もある。

分配型噴射ポンプは列型噴射ポンプと比較して絶対的な噴射許容量では劣るものの、きめ細かな制御が行え、且つ部品点数も大幅に減らせる為にディーゼルエンジンの小型化と低排気量化に大きく貢献した形式といえる。しかし、列型噴射ポンプと異なりポンプ内部の潤滑を軽油の硫黄成分にのみ頼る構造の為、近年の脱硫化の進んだ軽油やいわゆる不正軽油などを用いると故障を起こしやすくなる。但し、近年の軽油は硫黄に代わる潤滑成分が添加されている他、必要に応じて潤滑添加剤などをガソリンスタンドで別途補給する事も可能な為、正規の軽油で運用する限りはそれほど問題は生じない。

[編集] 近年の動向

近年ではディーゼルエンジンに対する排ガス規制や燃費規制が年々強化される傾向にある為、エンジンの駆動力の損失を引き起こす機械式噴射ポンプは徐々に廃れつつある。 代わって、コモンレール(金属製の頑丈なパイプ(レール)に高圧燃料を蓄えて、電子制御の噴射を行う)式やユニットインジェクター式噴射ポンプなどが、燃料噴射を、完全に電子制御化する為に用いられている。このようなシステムを用いる事で、ディーゼルエンジンでも非常に高度な燃焼制御が可能となり、高出力且つクリーンなエンジンを実現する事が出来る。

[編集] ガソリンエンジンとの比較

以下の長所と短所はエンジンとそれを搭載する乗り物が大型であるほど長所が目立ち短所が目立たなくなる傾向がある。逆に小型軽量の乗り物であるほど短所が目立ちガソリンエンジンが有利になる。このため、小型車はガソリンで大型車はディーゼルになることが多く、船舶や鉄道など大型機関を搭載した大量長距離輸送手段はディーゼルの独擅場になっている。

[編集] 長所

[編集] 燃費・効率面

空気過剰率が大きいため、作動ガスの比熱比が高く図示熱効率が高い(投入したエネルギーに対して燃焼ガスの温度上昇に使われる割合が高い)

部分負荷時の燃料消費率が低く、同じ仕事に対する二酸化炭素の排出量が少ない。端的には燃費が良くなる。これがヨーロッパでのディーゼルシフトの最大の要因であり、世界初となった燃費100km/3リットルの自動車の実用化もディーゼルエンジンなしでは困難であったと思われる。


亀裂の蒸気は臭気を持っていません

高回転運転には不適[5]なため、同排気量あたりのガソリンエンジンと比較して表示上の最高出力は低い。しかし実用トルクの発生回転数がガソリンエンジンに比べて低く、しかもフラットな特性であるため、低回転でも出力が得られる。実用回転域が下がることにより、機械的な損失が減り、燃費の向上にも寄与している

[編集] 構造・動作面

オットーサイクルのガソリンエンジンと比較して、圧縮時の筒内が空気のみであるため、プレイグニッション・ノッキングなどの危険がないことから高い圧縮比を維持できる。同じ理由でデトネーションの発生が予混合気を使用したエンジンと比べて低く、また、全域で排気圧が高いため、ターボチャージャーとの相性が良い。さらに、出力制御を燃料噴射のみで行えるため、出力制御のためにスロットルバルブが必要ない(自動車用はガバナー制御や吸気騒音低減のためスロットルバルブを持つ)。そのため絞り損失が小さい。

ガソリンエンジンには点火時の炎の伝播速度によりシリンダの直径(ボア)に限界があるのに対し、ディーゼルエンジンには限界が無いので大型化に適している。ガソリンエンジンでは、多気筒化で排気量を確保して高トルクを得るか、または、高回転化で出力を上げなければならないのに対し、ディーゼルエンジンでは1シリンダーあたりの大容積化が可能であり、構造が単純化出来る。また、大型化に適しており、大型化することにより熱効率が高まり、圧縮比が11 - 13程度で済むので効率が良くなる。

燃料がガソリンに比べて安全性の高い物であるため、火災事故に対する安全性が高い。特に被弾することを前提とした軍用車輛ではこのメリットが大きく[6]、近代では軍用車輛のエンジンはディーゼル化が進められ、燃料も安定性が高いJP-8が用いられている。

[編集] 短所

エンジンブロックに高強度・高剛性が求められ、噴射ポンプや過給機なども加わる。さらに、燃料噴射システムに高精度・高耐久性が求められ、コスト高となる。吸気管負圧を得にくいため、自動車において、それを動力源とするブレーキブースターなどをガソリンエンジン車と共用する場合、別にバキュームポンプが必要となる。寒冷地では燃料中のパラフィンが析出してフィルターで目詰まりする場合がある。なお、エンジンが重くなるため重量出力比が悪く、軽量化を要求される航空機ではほとんど採用されていない。

環境面への影響として、自己着火に必要な高温を高圧縮で作るため、振動や騒音が大きくなったり、小排気量エンジンの場合はエネルギー損失が多い。また、脈動が大きく、吸排気系の振動や騒音が大きい[7]。燃焼室内が窒素過多であるため窒素酸化物が発生しやすく、拡散燃焼なので均一燃焼が難しく、黒煙や粒状物質 (PM) が発生しやすい[8] 。また、希薄燃焼域(軽負荷時は30:1から60:1)での運転では排気中の残留酸素が多く、酸化性雰囲気では三元触媒が使えない。従来の排ガス清浄化装置では、ガソリンエンジンより有害排出物が多いため、欧州メーカーのディーゼル車は日本や米国の排出ガス規制を満たしていないものがある。

ディーゼルエンジンではガソリンエンジンとは異なる特性に応じた特別の装置が必要になる。 燃料噴射装置や排ガス対策の装置類がその代表であるが、これら以外にもガソリンエンジンのものとは異なる装置が用意されていたり、同様の装置でもディーゼルエンジンの特性に適した工夫が施されている。

下記以外でも、原理的に振動と騒音がガソリンエンジンより大きくなるため、ディーゼルエンジンでは2次バランサーを追加したり、防振ゴムによる固定には高度な技術が使用され、また、ブレーキとして圧縮圧開放式エンジンブレーキも使用されることがある。

[編集] 予熱機構

ガソリンエンジンにおける点火プラグのような着火機構を持たないため、燃焼室が完全に冷え切った冷間時の始動では、吸気が着火に必要な温度に達しないことがあり、「予熱」が必要となる。副室式では、燃焼室内に頭部を露出させた「グロープラグ」で燃料に着火し、直噴式では主にインテークマニホールド直前に置かれた「インテークヒーター」で吸気を加熱する[9]

[編集] スターターモーター

小型エンジンの始動時にはディーゼルエンジンもガソリンエンジンも共にスターターモーターによってクランク軸を回転させ、燃焼サイクルを開始する。ディーゼルエンジンではガソリンエンジンよりも圧縮比が高いため、ピストンによる圧縮の負荷に対応して、同程度の排気量の場合でも2.5 - 3倍程度の出力のスターターモーターを備える(電装系が24ボルトであることの主だった理由でもある)。

大型エンジンの始動時には圧縮空気をシリンダ-内に吹き込み、ピストンを直接動かして始動する。

[編集] エンジン停止機構

ディーゼルエンジンは着火に電気を用いていないため、エンジンキーをオフの状態にし(バッテリーからの電源を断つ)ても停止しない。運転を停止させる方法には以下の3種類がある。

燃料供給ストップ
主に小型エンジンに多い方法。古い列型ポンプには、手動式やキーオフの状態でモーターが噴射ポンプのスリーブ制御ロッドを直接動かして燃料を絞るものがあるが、分配型以降では、キーオフで「閉」となる電磁弁が用いられている。ピストンが吸気を圧縮する力で停止するため、振動が出ることと、停止位置が同じになりやすい[10]短所もある。
吸気ストップ
インテークマニホールド直前に置かれたインテークシャッターで吸気を絞る方法。停止は滑らかで、振動が少ない。シャッターのアクチュエーターには、モーターまたは負圧駆動のダイヤフラムが用いられる。
圧縮力の開放
てこなどで給排気バルブを「開」の状態にし、ピストンが吸気を圧縮しないようにする方法。手動でクランキングを行う小型の発動機などでは、始動時の負担軽減のためにデコンプを利用するが、その機構を停止時にも用いるもの。未燃焼ガスや燃料が排出される欠点があり、これら以外では主流ではない。

[編集] EGR

シリンダー内で燃焼済みの排ガスの一部を吸気系へ導入する排気再循環 (Exhaust Gas Recirculation, EGR) によって、吸気中の酸素量を減らしてピークの燃焼温度を下げ、NOxの発生を抑制する。ガソリンエンジンでもEGRが使用されていたが、21世紀現在ではガソリンの排ガス特性に合った三元触媒の登場によって排ガス対策の主役は交代している。燃焼室内の温度上昇を助長しないよう、還流ガスの温度を下げるEGRクーラーの装備が一般化している。過給機の使用状況によってはシリンダーー部への吸気圧(供給圧)が排気圧より高くなるため、逆流を防止する逆止弁が必要になる。

[編集] エンジンオイル

エンジンオイル#ディーゼル車も参照。 ディーゼルエンジンでは正しく添加剤が加えられたエンジンオイルでないと、シリンダー内の燃料の燃え残った微粒子が、ピストン側面のトップリング付近でエンジンオイルの主成分である鉱物油と結合して沈積物を作り、リングを固着する「リングスティック」という現象が起きる。これを防止する為に、エンジンオイルにはピストンリング付近に溜まる燃え残り、つまり「煤」や「スラッジ」を洗い流してエンジンオイル中に分散させる清浄分散剤が加えられる。また、排気 (EGR) やブローバイガスの還流で、それらに含まれる硫黄などによる酸でエンジンオイルが変質するのを防ぐ酸化防止剤や、腐蝕防止剤、粘度を適正に保つ粘度指数向上剤も加えられている。

ガソリンエンジン用オイルとの大きな違いの一つとして酸中和性があげられる。高硫黄分の燃料を使用するエンジン、例えば重油を使用する船舶用ディーゼルエンジンなどにおいては発生する多量の酸を中和する為に塩基価(アルカリ価)の高いオイルが求められる。一方軽油を使用する車両用ディーゼルエンジンでは近年の軽油の低硫黄化による酸の低減とDPF保護の観点からあまり高い塩基価は求められなくなってきている。これは酸中和に主に用いられる金属系清浄剤が燃焼時に灰分を生成しDPFの目詰まり等を起こすためで、DPF対策を行ったオイルは低灰分オイルなどと呼ばれる。これらのオイルでは金属系清浄剤の使用を抑える代わりに無灰系分散剤を多用しススの分散性を高めるなどの対策を行っている。低灰分オイルは低硫黄軽� �の使用を前提としているため硫黄分の高い燃料には対応していない。

ガソリンエンジンのエンジンオイルと比べると、ディーゼルエンジンのエンジンオイルは早期にまっ黒くなるが、これはエンジンオイル本来の機能が正しく働いているためである。

[編集] エンジンオイルフィルター

ディーゼルエンジンのエンジンオイルは、ガソリンエンジンのものに比べ、早期に多くの微粒子を取り込むため、オイル・フィルターは大型で高効率なものが使われる。一部エンジンでは、本来のオイル流路とは別に設けられた、遠心式や吸着式によるバイパス式フィルターで微粒子を取り除いてオイルパンに戻すものもある[出典 1]

[編集] 主な用途

水上船舶、潜水艦、トラックやバスといった大型自動車や、ディーゼル機関車や気動車などの鉄道車両、戦車のような軍用車両[11]、建設機械、農業機械[12]、内燃力発電などのエンジンに使用される。

[編集] 船舶

21世紀現在、外航大型船舶では主にC重油を燃料とする、超ロングストロークで巨大な毎分100回転程度という低回転のユニフロー掃気2ストローク低速ディーゼル機関が主流となっている。内燃機関の中でも特に熱効率に優れ、強力な過給器と組み合わせることで熱効率は50%を超える。


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4ストローク中速ディーゼル機関(毎分300 - 1,000回転)は、大型漁船クラスから外航大型船舶まで幅広く使われている。燃料は機種によってA重油を使用するものとC重油を使用できるものとがある。熱効率では2ストローク低速ディーゼル機関に及ばないものの、出力当たりの重量や外形寸法が小さく機関配置の自由度が高いという利点が有り、それによる恩恵が大きいクラスの船や、フェリーやRO-RO船のように構造上機関室の高さを抑えたい船で主流となっている。

高速船艇やプレジャーボート、小型漁船などでは、A重油あるいは自動車同様に軽油を燃料とする4ストロークの高速ディーゼルエンジンが使われており、小型のものでは自動車用と共通のエンジンが使われているケースも多い。

歴史
1900年代から小型船に置ける試行的採用が始まったが、外航船舶として本格的な成功を収めた最初のディーゼル船は、1912年にB&W(バーマイスター・ウント・ウェイン)の1,250hpエンジン2基を搭載して建造されたデンマークの5000t級貨物船「セランディア」(en:MS_Selandia)である。この船は同クラスの蒸気機関搭載船に比して三分の一程度の燃料消費で航行できた(かつ、蒸気船のようなボイラー用の真水が不要であった)ことでその経済性と航続距離における優位性を立証し、実用的成功を収めた。
その後、第一次世界大戦での潜水艦用エンジンへの導入をきっかけに、1920年代以後は軍艦・商船にも本格的普及が始まったが、1950年代までの船舶用大型ディーゼルエンジンにはある程度の高品質な重油が必要で、石炭や粗悪重油でも使用可能な蒸気ボイラーで作動する蒸気レシプロ船・蒸気タービン船を駆逐するまでには至らなかった。
しかし第二次世界大戦後、燃料としては最も廉価な「C重油」を予熱することで使用可能な低速ディーゼルエンジンが出現し、特にその圧倒的な経済性で商船の分野において蒸気タービン機関に取って代わった。

[編集] 鉄道

[編集] 自動車

日本では、ディーゼル燃料がガソリンに比べて税制上安価(おおむねレギュラーガソリンの90%程度の価格)であり、経済性を優先する商用車(トラック、バス※1、※2、ライトバン)などにディーゼル自動車がみられる。しかし、2008年現在の日本では、原油価格の高騰後にあまり値段が下がらず、燃料価格面での優位性は下がっている。

欧州では、大型車や商業車への普及に加え、乗用車でも新車販売台数の約43%がディーゼル車(2006年)である。米国では、乗用車市場におけるディーゼル車のシェアは0.5%(2005年)である。

モータースポーツでのディーゼルエンジンの登場は古く1952年のインディ500でカミンズ製のディーゼルエンジンを搭載した車がポールポジションを獲得している。2006年には、ディーゼルエンジンを搭載したアウディ・R10 TDIがル・マン24時間レースに出場し初優勝した。WTCCでもディーゼルエンジン車は活躍しており、セアトのレオンはレースでの優勝に加え、シーズン総合優勝も達成している。

高速定速走行の頻度が高い高速バスや輸送用トラックには以前からターボチャージャーが普及していたが、低ミュー路や走行抵抗の大きい悪路での微・低速走行の機会の多いダンプトラックでは、レスポンスに優れ扱いやすい排気量20リッター以上のV型8気筒ノンターボエンジンが好まれてきた経緯がある。しかし、次第に厳しくなる排ガス規制の前に、各社とも排気量を11 - 13リッター程度まで落とし、有害排気の低減化装置と親和性が高い直列6気筒エンジンに生産を絞り込んだため、排気量の大きなV8自然吸気エンジンは姿を消した。自動車用4ストロークエンジンでは過給機による高圧化が進み、すでに筒内最高圧力 (Pmax) の上昇限界のために圧縮比は低下傾向にある。

自動車用エンジンの中でも低燃費で信頼性も高いディーゼルエンジンの特徴が最も発揮される排気量9 - 30リッター程度の中型・大型のエンジンは、ほとんどのものが直接噴射式でターボ過給とインタークーラーが採用され、9 - 16リッター級のものでは直列6気筒で500hp強の出力が得られるようになり、16リッターより大型ではV形配列が採用されるようになっている。

排気量2 - 5リッター程度の小型のディーゼルエンジンは、静粛性と排ガスの清浄性に対する要求が中大型エンジンよりも強い傾向があり、新型車種の多くがコモンレールやユニットインジェクタによる直接噴射式となっている。

さらに小型の2リッター前後のディーゼルエンジンでは、多くが乗用車相当となって静粛性や排ガス対策などに万全が求められる。また、欧州に比べ日本では、CO2の削減メリットよりNOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)に対する嫌悪や法規制が優先されているため、2000年代末頃から新型の小型ディーゼルエンジン搭載の乗用車は減少傾向が強い[出典 1]

[編集] オートバイ

インドでは古くからディーゼル二輪車が生産、販売されていたが、近年他国からも現代的な設計のものが現れている。イギリス陸軍ではカワサキ製オフロードバイクにディーゼルエンジンを搭載したものの運用を開始した。これにより陸軍車両燃料の軽油化を完了したとしている。同様の物はHDT M1030-M2 JP8(680cc)として市販されている。以前生産されていたものとして、富士重工業製のエンジンを搭載したエンフィールド=ロビン・D-R400Dがある。

[編集] 航空機

1920年代以降に開発された大型飛行船のLZ129ヒンデンブルクやLZ130は、逆回転可能なディーゼルエンジン(ダイムラー・ベンツ DB 602)により、トラクタープロペラを駆動していた。カムシャフト上のギアを変えることにより回転方向を変えることができる。全出力からエンジン停止、逆回転させて全出力までの時間は60秒以下であった。 1929年に完成したR101飛行船には直列8気筒のビアドモア製トルネードエンジンが5基搭載された。鉄道用の4気筒エンジンを2つ組み合わせて高出力、軽量化したもので燃料の火災のリスクを減らすためにディーゼルが選択された。大型飛行船は固定翼航空機と異なり、瞬間的な挙動を要求されず、中速クラスの可逆回転ディーゼル機関を利用することも容易であったが、1930年代末期の硬式飛行船そのものの衰退で、それ以上の発展を見なかった。

飛行船以外の固定翼式航空機において、最初にディーゼルエンジンが試されたのは1920年代から1930年代にかけてであり、実用に供された代表的なものとしてはパッカードの空冷星型エンジン(黒煙排出や強度面の欠陥により早期に市場から淘汰された)や、ユンカース ユモ205などがあり、特に後者は一定の成功を収めた。ソビエトでは第二次世界大戦中 チャロムスキー Ach-30ディーゼルエンジンがイェモラーエフ Yer-2やペトリャコフ Pe-8などの爆撃機に搭載された。 フランスではブロック(Bloch)がMB.203爆撃機にクレルジェ製の星型ディーゼルエンジンを搭載した。 ロイヤル・エアクラフト・エスタブリッシュメントでは1932年にロールスロイスコンドルエンジンを圧縮着火式エンジンに改良して、ホーカー・ホーズリー爆撃機に搭載してテストした。

このように多くのメーカーがエンジン開発を試みたが、第二次世界大戦においてディーゼルエンジンは軍事用途には適さないと判断され、主流とはなり得なかった。

戦後のユニークな提案としては複雑なネイピア ノーマッドエンジンがあるが、これも普及には至らなかった。

概してディーゼルエンジンは、レシプロ式のガソリンエンジンや、ケロシン燃料のターボプロップエンジンに比べ、強度確保の制約によってパワーウェイトレシオに優れないことが、重量制限の厳しい大型航空機での使用を妨げてきたと言える。

ヨーロッパでは航空機用ガソリンのコストが非常に高く、自動車でのディーゼル技術の進歩により、1980年代以降、小型プロペラ機向けの航空機用ディーゼルへの関心が復活している。この結果、既にディーゼルエンジン搭載小型機の実用例が生じ、他の複数のメーカーもエンジンや航空機の開発を行っている。その多くがジェット燃料もしくは自動車用軽油など、市場で入手容易な燃料を使用しているのも特徴である。高いパワーウェイトレシオを得るために「エアロディーゼル」と呼ばれる航空用途に適化した新しいエンジンの開発が進められている。一例としてイギリスのDair2ストロークディーゼルが挙げられ、これは対向ピストン式エンジンである。

[編集] 環境への影響と対策

ガソリンエンジンより熱効率の高いディーゼルエンジンは、原理的には環境への負荷が少なくて済む。しかし、ガソリンエンジンには無いいくつかの問題点も含んでいる[出典 1]

あらかじめ空気とガソリンを混合して圧縮するガソリンエンジンと異なり、高温の空気中に液体燃料を噴射する拡散燃焼の原理上、均一な燃焼が難しく、PMや黒煙を発生しやすいことが欠点である。また、高温高圧環境を利用する内燃機関の中でもディーゼルエンジンは特に高圧であり、また余分に空気を取り込むことから、原理上は窒素酸化物 (NOx)の生成量が多くなってしまう。

さらに、部分負荷域(パーシャルスロットル)での空燃比は30:1から60:1と希薄となるため、排出ガスは酸素過多の状態となり、そのままでは排出ガス浄化のための触媒である三元触媒が有効に働かない[13][14]

[編集] NOxと黒煙

排ガス中のNOxと黒煙とは、二律背反の関係にある。

高圧噴射で少量の燃料を完全燃焼させ黒煙の発生を防ごうとすると、高温高圧下でシリンダー内の窒素(空気)により、NOxが生成されてしまう。このため、ガソリンエンジンと比べてより多くの空気(窒素)を吸い込むディーゼルエンジンは黒煙の発生対策が容易ではない。燃焼時間を伸ばし温度と圧力のピーク値を抑えるとNOxの生成は減らせるが、従来の1回吹きでは、燃料過多となり燃え残りが増えて黒煙が多くなり、燃費は悪化し、CO2とCOやHCも増加するという別の問題が発生する。このような問題は、コモンレール方式(後述)で少量の燃料を数回に分けて噴射することで大きな改善が行なわれた。


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[編集] 硫黄とSOx

ディーゼル燃料(軽油)には硫黄が残留している。そのためディーゼルエンジンでは有害な硫黄酸化物 (SOx) が排出される。また、触媒表面に付着した硫黄成分は排気ガス浄化のための触媒機能を阻害する。欧州で使用される軽油が低硫黄分の北海産原油を原料とすることが多いのに対し、日本で使用される軽油は高硫黄分である中東産原油を原料とすることが多く、欧州に比べ脱硫レベルは低かった。

日本では従前、産業用として安価であることが優先される軽油と重油では高レベル脱硫が行われず、酸化触媒の普及も進まなかった。このことは、ディーゼルエンジンによる大気汚染拡大にも関係していた。脱硫に関しては2004年末、自動車排出ガス規制に関連する「自動車燃料品質規制値」の変更が行われ、軽油に含まれる硫黄の許容限界は、従来の0.01%質量以下から0.005%質量以下へと改められた[1] (PDF)

硫黄分には潤滑作用があるため、脱硫後の燃料油には潤滑剤が添加される。[15]

[編集] 関連する法規制

日米欧の各地では、ディーゼル自動車に対する環境規制が行われている。

[編集] 排出ガス処理

排出ガス処理技術は、できるだけ低温・低圧で燃焼させることでNOxの発生を少なく抑え、酸化触媒やDPFによりPM、CO、HCを処理する方法と、できるだけ高温で完全燃焼させることでCO、HCの生成を抑え、その結果増加するNOxは尿素(尿素水)により還元処理する尿素SCR還元システムの2つに落ち着きつつある。

前者は乗用車用の小型のものから大型のディーゼルエンジンにいたるまで、現在の主流となっている。後者は大型トラック用ディーゼルエンジン用として日産ディーゼル工業が開発を進めたもので、同社と提携した三菱ふそうトラック・バスも一部の車種に採用した。

そのほか、燃料の改質によりNOxを減らす方法がある。ジメチルエーテル混入、水エマルジョン燃料などの研究があるが、供給体制の整備や、使用者が補給を怠った場合の対策などの問題があり、実用化は進んでいない。

[編集] 微粒子除去装置

ディーゼルの排気ガスに含まれる粒子状物質 (PM, Particulate matter) は、多くのディーゼル車では「DPF」(Diesel Particulate Filter、ディーゼル微粒子フィルター)と呼ばれるセラミック製のフィルターで捕らえて燃焼処分されるようになっている。

DPFはエンジンから伸びる排気管の途中に挿入され、通常は内部に詰められた多孔質セラミックによる微細な間隙を排気が通過する過程で煤とも呼べる粒子状物質をその広い表面で捕集する。 多孔質の表面には白金などの金属触媒が塗布してあり、300度以上の雰囲気中では排ガスの粒子状物質に触媒が接触することで化学反応が起こり、粒子状物質は無害な気体に変わって排出される。

DPF内に粒子状物質が堆積した時点で、300度以上の雰囲気が作り出されれば粒子状物質が無害化されて除去出来るが、エンジンからの排ガス温度が低い場合には、「強制再生」といって、EGRや燃料過多の排ガス、燃料添加型金属触媒を用いて定期的に高温状態を作り出してDPFに溜まったPMを無害化して取り除く作業が必要になる。

触媒の多くは硫黄に弱く、フィルターの目詰まりの原因となるため、低硫黄化された軽油以外(不正軽油など)の使用はできないが、フィルターにセラミックを使わず、金網と炭化珪素繊維を用いた製品もあり、こちらは低硫黄軽油以外も使用可能である。

[編集] 尿素SCRシステム

排ガス中のNOxをアンモニアと反応させて、窒素と水に還元する浄化触媒。

幅広い排ガス温度領域でNOx還元性能が高い。尿素水の補給とシステム全体の取り付け場所の問題あるが、大型トラック・バス等においては実用化されている。

[編集] NOx吸蔵還元触媒

排ガス中のNOxをリーン燃焼時に取り込み、その後にリッチ燃焼で還元させる触媒、筒内直噴ガソリンエンジンで採用されていた。

一般的に直噴ガソリンエンジンでは三元触媒、ディーゼルエンジンではDPFと組み合わせて使用される。

乗用ディーゼルエンジン用としては、欧州仕様アベンシスで採用されているPMとNOxを同時に還元するトヨタのDPNR、米国排ガス規制をクリアしたホンダの触媒内でアンモニアを生成してNOxを還元する2層式NOx吸蔵還元触媒、またベンツは尿素噴射を行わない尿素SCR還元システムにNOx吸蔵還元触媒を組み合わせている。 日産はホンダの2層式NOx吸蔵還元触媒に似た新型触媒を開発、2008年に国内販売する車両に搭載すると発表した。(2009年4月時点で、エクストレイルの1車種のみが日本国内で販売されている)

NOxを還元するのにリッチ燃焼が必要な事と、軽油内の硫黄分が触媒の機能を奪うのが欠点である。

燃料を完全燃焼に近づけることができれば、排出ガスの黒煙は低減される。燃料噴射装置を高圧化し高度に制御することが試みられている。

ディーゼルエンジンの燃料は多様なものが使用できる[16]が、一般的には軽油や重油が使われる。

軽油は主要成分が200-350℃での沸点を持つのに対して、ガソリンエンジンで使用されるガソリンは30-220℃程度の沸点を持ち、このことがガソリンを揮発しやすく危険なものにしている。 また、この2つ燃料の引火点についても軽油の方がガソリンより高く、逆に発火点は沸点や引火点と異なり、軽油の方がガソリンより低い。この両者の特性から、ガソリンは火に近づけるだけで危険なのに軽油に火を近づけてもすぐには燃えず、それにも関わらず、火が無い環境でこれら2つの温度を上げてゆくと先に自ら火が着くのは軽油であり、この軽油の発火点の低さがディーゼルエンジンでの使用を容易にしている。

[編集] 新たな燃料

[編集] 合成油

エミッション低減の足かせとなる鉱物油由来の天然燃料に代わり、次世代のディーゼル燃料として注目されているのが、GTL(Gas To Liquid、ガス・トゥー・リキッド)、BTL(Biomass To Liquid、バイオマス・トゥー・リキッド)、CTL(Coal To Liquid、コール・トゥー・リキッド)等の合成油である。これらの燃料は、単体で、あるいは軽油に混合してディーゼルエンジンに使用することで、排ガスでは低公害化が期待できる。

GTL燃料の原料は天然ガス、CTL燃料は石炭であり、軽油に比べセタン価が高く、SOxの原因となる硫黄分やPMを発生させるベンゼン・キシレンなどの芳香族炭化水素をほとんど含まない。CNGや水素とは異なり常温でも液体のため、現在の燃料販売ルートになじみ易い。ただし、加工時のエネルギー分のCO2排出量がそのまま燃焼させるより増加するために、地球環境には優しくない[出典 2]。また、硫黄が含まれないことから、潤滑作用の点で軽油に劣るため、添加剤で対応する必要がある。

BTL燃料は、植物を原料とし液体燃料として合成したもので、GTL・CTL燃料と同様に硫黄や芳香族炭化水素を含まず、燃焼時に排出されるCO2は植物が生長する際に吸収したCO2[17]に等しくなる、などの特徴がある。

これらの合成油は、高セタン価燃料であるため、単体専用ディーゼルエンジンとしてなら圧縮比を13–15へと低圧縮比化でき、エネルギー効率を上げ低燃費化できるのも利点である。これらは、生産量が増加すれば価格も下がっていくと見られており、今後のディーゼル燃料の主流として期待されている。[18]

[編集] DME

ジメチルエーテル (DME) をディーゼル燃料として使う事も実用化されつつある。メタノールを脱水縮合反応合成してエネルギー密度を上げる方法ではなく、合成ガスからの直接合成による低純度低価格な大量生産が確立しつつある。原料として天然ガス、石炭、植物など合成ガス化できるものなら良く、有酸素燃料でガス由来の合成油より合成エネルギー損失が少ないのが利点である。

DME燃料は軽油と同等のセタン価で、硫黄分や芳香族炭化水素を含まない。機械式燃料噴射では低圧で体積変化するため噴射量制御が難しかったが、コモンレールで高圧化された事により噴射量制御が正確になり、適した燃料となった。

また、重油とDMEを混合することで、排気ガスの浄化が望まれることも明らかになりつつある。A重油等と混合した場合、NOx,COxもボリュームパーセントでは低下する。

[編集] BDF

植物油をエステル交換(メタノリシス)してグリセリンを除去し脂肪酸メチルエステル (FAME) とした燃料 (Bio Diesel Fuel; BDF) である。

[編集] BHD

油脂を水素化処理技術を応用して分解して作る水素化処理油 (Bio Hydrofined Diesel ; BHD) である。


[編集] 歴史(年表)

  • 1892年: 2月23日、ルドルフ・ディーゼルが "Arbeitsverfahren und Ausführungsart für Verbrennungsmaschienen" と題した特許 (RP 67207) を取得。
  • 1893年: ディーゼルが「既知の蒸気機関と内燃機関を置換する合理的熱機関の理論と構築」と題する論文を発表。
  • 1897年: 8月10日、ディーゼルがアウクスブルクで初の実働するプロトタイプを製作。
  • 1898年: ディーゼルがロシアの石油会社 Branobel にディーゼルエンジンのライセンスを供与。同社は蒸留していない石油で動くエンジンに興味を持っていた。同社の技術者らは4年をかけて船用のディーゼルエンジンを設計。
  • 1898年: ディーゼルは製造業者クルップとスルザーにディーゼルエンジンのライセンスを供与。両社はまもなく主なディーゼルエンジン製造業者となる。
  • 1902年: 1910年までにMANが据え置き型ディーゼルエンジンを82機製造。
  • 1903年: ニジニ・ノヴゴロドの造船所で、世界初のディーゼルエンジン搭載石油タンカー "Vandal" が進水。
  • 1904年: フランスで世界初のディーゼル潜水艦 Z を建造。
  • 1905年: Alfred Büchi がディーゼルエンジン用ターボチャージャーとインタークーラーを考案。
  • 1908年: Prosper L'Orange がDeutz社と共に、ニードル型噴射ノズルで精密に制御可能な噴射ポンプを開発。
  • 1909年: Prosper L'Orange がベンツ&シー社と共に予燃焼室式の半球型燃焼室を開発。
  • 1910年: ノルウェーの探検船フラム号にディーゼルエンジンを搭載。商船ではシェランディアが最初となる。1960年までに、船舶のエンジンは蒸気タービンや蒸気機関からディーゼルエンジンが主流となった。
  • 1912年: デンマーク初のディーゼル船シェランディア (Selandia) 建造。世界初のディーゼル機関車製作。
  • 1913年: アメリカ海軍の潜水艦がNELSECO社製のディーゼルエンジンを採用。郵便船ドレスデン号でイギリス海峡を渡っているとき、ルドルフ・ディーゼルが謎の死を遂げる。
  • 1914年: ドイツのUボートがMAN社製ディーゼルエンジンを搭載。
  • 1919年: Prosper L'Orange 予燃焼室式の特許を取得し、ニードル噴射ノズルを製作。カミンズがディーゼルエンジンを生産開始。
  • 1921年: Prosper L'Orange が連続可変出力式噴射ポンプを製作。
  • 1922年: ベンツがディーゼルエンジンを搭載した初のトラクターを発売。
  • 1923年: MAN、ベンツ、ライムラーが初のディーゼルエンジン搭載トラックを製作し、試験を開始。
  • 1924年: フランクフルトモーターショーにディーゼルエンジン搭載トラックが出展される。フェアバンクス・モースがディーゼルエンジンを生産開始。
  • 1927年: ボッシュがトラック用噴射ポンプと噴射ノズルを生産開始。Stoewerが初のディーゼルエンジン搭載乗用車を試作。
  • 1930年代: キャタピラー社が自社製トラクター用にディーゼルエンジンの生産を開始。
  • 1932年: MAN社が160馬力という当時世界最高出力のディーゼルトラックを発売。
  • 1933年: シトロエンが世界初のディーゼルエンジン搭載乗用車 (Rosalie) を製作。イギリスのディーゼルエンジン研究者ハリー・リカルドの設計したエンジンを採用[出典 3]。ディーゼルエンジンの使用が規制されていたため、発売されなかった。一方、日本ではヤンマーが小型汎用高速ディーゼルエンジンの自社開発に成功(「HB型」ディーゼルエンジン)。
  • 1934年: マイバッハが世界初の鉄道車両用ターボディーゼルを製造。
  • 1934年 - 35年: ドイツのユンカースが航空機用ディーゼルエンジン「ユモ (Jumo)」シリーズの生産を開始。有名なユモ205は第二次世界大戦の勃発までに900台以上生産されている。
  • 1936年: メルセデス・ベンツがディーゼル乗用車260Dを製作。ハノマーグやSaurerも相次いでディーゼル乗用車を生産。アッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道にスーパー・チーフ用のディーゼル機関車が採用される。建造中の飛行船ヒンデンブルクでディーゼルエンジンを採用(ダイムラー・ベンツ製エンジン 602LOF6)。
  • 1937年: ソビエト連邦が開発中の戦車T-34にディーゼルエンジンを採用。
  • 1937年: BMWが航空機用ディーゼルエンジン BMW 114 を試作。
  • 1944年: Klöckner Humboldt Deutz AG (KHD) が空冷式ディーゼルエンジンを開発。
  • 1953年: メルセデス・ベンツがターボディーゼル搭載トラックをシリーズで発売。
  • 1968年: プジョーが204に小型車としては初のディーゼルエンジンを採用。横置きで前輪駆動。
  • 1973年: DAFが空冷式ディーゼルエンジンを採用。
  • 1976年: 2月、フォルクスワーゲンが乗用車ゴルフ用のディーゼルエンジンの試験を開始。チューリッヒ工科大学でコモンレール式噴射システムを開発。
  • 1977年: 初のターボディーゼル搭載乗用車の生産開始(メルセデス・ベンツ 300SD)。
  • 1994年: ボッシュがディーゼルエンジン用ユニットインジェクターシステムを開発。
  • 1995年: デンソーがコモンレールシステムを世界で初めて実用化し、日野ライジングレンジャーに搭載。
  • 1997年: アルファロメオ・156で乗用車初のコモンレールを実現。
  • 1998年: BMWがディーゼルエンジン搭載の320dでニュルブルクリンク24時間レースに優勝。
  • 2004年: 西ヨーロッパで乗用車のディーゼルエンジン搭載率が50%を越えた。
  • 2008年: スバルが乗用車用の水平対向ディーゼルエンジンを導入。EGRシステムで「ユーロ5」にも適合。

[編集] 日本のメーカー(2010年現在)

[編集] 海外のメーカー

[編集] 欧州諸国

ドイツ

フランス

スウェーデン

フィンランド

その他


[編集] アメリカ

[編集] アジア諸国(日本除く)

[編集] 基幹部品メーカー

  1. ^ ディーゼルは微粉炭を含む様々な燃料の使用を意図していたが、当初計画された微粉炭燃料の使用は成功しなかった。1900年のパリ万国博覧会ではピーナッツ油での運転を実演した(バイオディーゼルを参照)ように、液体燃料であれば相当に広範囲な種類の燃料を使用可能である。
  2. ^ ディーゼルサイクルとオーットーサイクルの性質を併せ持つことから、メルセデス・ベンツが名付けた造語。
  3. ^ HCCI(予混合圧縮着火) 日産自動車>将来技術/取り組み
  4. ^ ターボチャージャーにより排気エネルギーの一部を回収可能となり、効率がさらに改善される。吸気量の増加に対する燃料噴射量の増量で、同じ出力をより小さい排気量、より低い回転数で発生することも可能となり、過給によってディーゼルエンジンの高性能化が一気に進んだ。ターボチャジャーによる過給では、排気量1リッター当たりの出力が100馬力を超えるものも登場している。
  5. ^ 高回転運転では2.0リッターで4気筒の実用上限回転は、4,800rpm程度である。
  6. ^ 但し、エンジンブロックや燃料タンクに直撃弾を受けた場合、ガソリンエンジンと同様に炎上する危険性が高い
  7. ^ 船舶用、コジェネレーション用では脈動を抑える為、アキュムレータを備えた物もある
  8. ^ 高地など気圧の低いところでは更に不完全燃焼による黒煙が多くなる
  9. ^ 直噴式にもトヨタ・1HD-T型エンジンのようにグロープラグを用いるものがある
  10. ^ フライホイールのリングギア上の何箇所かが、いつもスターターモーターのピニオンギアの位置に来る→偏磨耗の原因
  11. ^ 軍用車両では、使用燃料である灯油がガソリンに比べて引火の危険が少なく、航空機用の様な多様な燃料が使える(マルチフューエル)ことが採用理由の1つである。
  12. ^ 農業機械では主に耕運機、トラクター、コンバイン、ごくまれに管理機や6条植以上の乗用田植機などがある。
  13. ^ ガソリンエンジンでは理論空燃比で燃焼させた場合、三元触媒により炭化水素 (HC)・窒素酸化物 (NOx)・一酸化炭素 (CO) を同時に浄化できる。
  14. ^ 吸気時に噴射燃焼させる「予混合燃焼」方式もある。
  15. ^ 脱硫した際に出来る副産物からさらに硫黄を単体として取り出すことも出来、様々な薬品や工業製品の原料として使われる。日本に限って言えば、国内で使われている硫黄は全て中東から運ばれた原油から脱硫した際に取れる硫黄である。
  16. ^ ディーゼルエンジンに誤ってガソリンを給油すると、発火点が高いガソリンは上手く点火できずにエンジンは止まる。給油配管と噴射ポンプからガソリンを除くことで復旧できるが、潤滑性の無いガソリンによって噴射ポンプを傷める可能性がある。
  17. ^ BTL燃料は、生産過程と消費過程でのCO2の量が等しいことから、カーボンニュートラルとみなされ、京都議定書の目標達成には非常に有効となる。葉や茎など、植物全体を原材料としたセルロースから作られるBTL燃料は、植物の種子から得られるデンプンを元にした植物油燃料(BDF/バイオ ディーゼル フューエル、SVO/ストレート ヴェジタブル オイル)に比べ、植物の質量あたりのエネルギー量は2倍、同じ耕地面積から得られる収穫量は10倍以上と言われる。雑草などを原料にできるため、食物価格の高騰や、水不足の問題を解決する一助ともなる
  18. ^ マイクロ・エナジー. "B.T.L 石油代替燃料の製造システム". 2010年4月22日閲覧。
  1. ^ a b c 杉本和俊著 『ディーゼル自動車がよくわかる本』 山海堂 2006年7月24日初版第1刷発行 ISBN 4381077709
  2. ^ 石井彰著 『天然ガスが日本を救う』 日経BP社 2008年9月10日初版発行 ISBN 9784822247027
  3. ^ Sir Harry Ricardo

[編集] 参考文献

  • Diesel, Rudolf: Die Entstehung des Dieselmotors. Erstmaliges Faksimile der Erstausgabe von 1913 mit einer technik-historischen Einführung. Moers: Steiger Verlag, 1984.
  • ルドルフ・ディーゼル著 / 山岡茂樹訳・解説: ディーゼルエンジンはいかにして生み出されたか.東京: 山海堂 1993.8
  • Rauck, Max J.: 50 Jahre Dieselmotor : zur Sonderschau im Deutschen Museum. München: Leibniz-Verlag 1949.

[編集] 関連項目

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